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埼玉土建に加入する大工・工務店の仲間から、住宅用断熱材不足に関する悲鳴が聞こえてきている。さらに、最近では電気や設備に使われるロックウールなどの断熱材も不足に陥っており、工期へのしわ寄せは住宅建築にとどまっていない。
現場での断熱材不足に対する仲間の声を受け、埼玉土建では全国建設労働組合総連合、建材の流通を管理監督する経済産業省住宅産業窯業建材課、そして国土交通省建築指導課の3者に対し、聞き取り調査を行った。
省エネ住宅の急速な普及が原因
調査の結果明らかになった断熱材不足の最大の原因は、やはり住宅版エコポイントやフラット35Sの要件である省エネ住宅の増加だ。現在着工されている住宅の約半数が省エネ住宅と言われるよう、急速に住宅の省エネ化が浸透しており、需要がメーカーの際戦力を上回ってしまっている。さらに、
グラスウール断熱材の品薄から、金額は高いロックウールや発泡ポリスチレン板が住宅建築に流れており、設備や電気が利用する断熱材も品薄状態になってしまっている。
供給の不安による仮儒・複数発注が隠れた原因に
また、経産省の宮内担当官によると建材流通の混乱の背景には金融不況を景気とした建材流通の繁華があるという。金融不況前までは建材商社が大きな倉庫を抱え建設資材を一定量備蓄することで、断熱材の繁忙期と閑散期の流通のクッション材の役割を果たしてきた。しかし、金融不況を契機とし、建材商社が倉庫を縮小、商社のクッション材としての機能が低下したため、今回の断熱材の急激な需要に商社が対応できず、メーカーの生産力次第となってしまったと宮内担当者は話す。さらに、断熱材の納入に不安を持った事業者による、先の需要を見込んで多めに発注する「仮儒」や3件程度の
メーカーに同じ物件の断熱材の発注をする「複数発注」が横行していることも隠れた原因として挙げた。
国の対応は後手後手、一向に改善の兆しなし
経産省と国交省は混乱を収拾する対策として、建材メーカーに対してフル生産を依頼、海外製の建材の認定を行っているJISに対しては建材商社による海外建材の認定申請を迅速に処理することを要請、商社にも実需と仮儒を見極めた販売を指導している。メーカーはそれを受け、出来る限りの生産ラインの変更や休日返上24時間フル体制で向上を稼働させているが、事態は一向に収拾していない。住宅エコポイントで使われる断熱材の生産力を政府が見誤った感は否めなく、対応も後手後手になっている。エコポイントは来年度も続く。官製不況にならないよう、生産体制の構築・誘導が必要だ。 (住まいのネットワーク64号はこちらから)
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