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今年度予算が通過し、住宅分野での税制や助成金が明らかになってきた。それを見ると昨年以上に「省エネ住宅」への優遇が拡大、2020年の次世代省エネ基準義務化にむけ、住宅生産者、住設メーカー、消費者の背中を強力に押すことになる。工務店の省エネ対応は急務と言っていいだろう。
節電化補助事業が大幅拡充
福島原発の事故による全国の原発停止、再生エネルギー推進の世論の高まりと必要性が叫ばれる中、国では住宅分野の節電化を促す補助制度の開始へ向け準備を進めている。
その中で特に注目すべきは太陽光発電への補助金だ。これまで国は補助対象である機器の1kw当たりの費用をたびたび引き下げることにより、消費者の太陽光発電の導入コスト負担の引き下げを促し太陽光発電の普及をすすめてきた。
しかし、今回の制度変更では、一律だった補助額がシステム価格によって2段階になり、しかも、システム価格が安いほうが補助率が高くなるというものになっている。具体的にはkw当たり55万円以下の機器の補助は3万円なのに対し、47万5千円以下の機器の補助は3万5千円となっており、補助金を差し引いた導入費用は単純計算で、前者が52万円と後者が44万円となり8万円もの差ができることになる。
一般的な3・5kwシステムなら28万円も変わってくるため、当然消費者は47万5千円以下のシステムを選択することとなり、メーカーはシステム価格を引き下げざるを負えなくなるのだ。さらにはモジュールの変換効率の条件も引き上げ高性能で安価な製品の開発を促すことも進めていく。
住宅供給者の住宅ゼロエネ化を支援
今年度、国交省は住宅供給者の住宅ゼロエネ化への取り組みを誘導する施策として、トップランナーに向けた「省CO2先導事業」と中小工務店に向けた「住宅ゼロエネ化推進事業」を実施する。
ゼロエネ化事業は住宅の躯体・設備の省エネ性能の向上、再生可能エネルギーなどにより、年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロまたはおおむねゼロになる住宅をゼロエネ住宅として、それを中小工務店が供給する場合、ゼロエネ住宅にかかるコストの2分の1で1棟当たり最大165万円を補助するもので、中小工務店の背中を後押しするという点で長期優良住宅の普及促進事業と似ている。
また、「省CO2先導事業」は住宅の新築や改修におけるCO2排出を抑制する先導的な取り組みを支援し、具体的にはライフサイクルカーボンマイナスの取り組みや電気自動車との連携を積極的に評価していく。これは住宅ゼロエネ化事業よりも総合性や先導性を求められるため、トップランナーの取り組みを後押しするものになっている。
長期優良住宅では先導的モデル事業で住宅メーカーやビルダーの取り組みを後押しし、それがメーカー・ビルダーの長期優良住宅の標準化につながっている。住宅ゼロエネ化は2020年を目標に義務化を目指している次世代省エネ基準よりもずっと省エネ性の高い住宅であり、その補助制度が始まっているということは、中小工務店もその方向を見据え準備を進めていく必要があるということだろう。
税制でも省エネを優遇
現在、国交省は次世代省エネ基準を超える省エネ性能の住宅を認定する「認定省エネ住宅制度(認定低炭素住宅)」の準備を進めている。
認定省エネ住宅は長期優良住宅同様、建築計画を自治体が認定するものだが、認定を受ければ優遇税制が適用される。(優遇の内容は図参照)認定を受けるにあたっては事前に指定の機関での技術審査などが必要になるが、同制度は「フラット35Sエコ」や「復興住宅エコP」が併用できる予定で手続に係る費用は実質的な負担は低減される。
同時に贈与税の非課税額も一般住宅の非課税措置に500万円上乗せされ、この2つの税制面でも認定省エネ住宅を後押しする。
省エネ義務付けは3段階で
国交省は「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」で次世代省エネ義務化に向けた実施時期の工程表を示した。
基準の適合義務化については、15年度ごろから始め、最初は2000?以上の大規模建築、その後300〜2000?の中規模建築、最後に住宅などの300?未満の建築物というように規模別に3段階で実施していく予定だ。
義務化は2020年までに実施としているが、一部では前倒しすべきとの声も上がっており、前倒しされることも十分に考えられる。そのため、課題である中小工務店・大工の技術水準の底上げで5カ年計画での省エネ施工技術習得支援なども実施する予定だ。
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